インプラントの痛みについて
このページでは、多くの人が気になるインプラントの痛みについて解説します。
気になるインプラントの痛みのあれこれ
インプラントを受けるうえで気になることの一つに、「痛み」があります。
最近の歯科治療は、どんな治療でもほとんど痛くないと言われていますが、それでも実際に受ける側としては痛みは不安です。インプラントも、他の多くの治療と同様に痛くないのでしょうか? 術中の痛み、静脈内鎮静法、術後の痛み、自分でできる痛み対策などについてまとめました。
実のところ術中の痛みはほとんど無し
結論から言えば、インプラントの術中の痛みはほとんどありません。痛みが不安な方は、まず安心してください。
麻酔をしているから大丈夫!
インプラントとは、アゴの骨に穴を開けて歯を埋め込む手術です。聞いただけでも恐ろしい手術ですが、恐ろしいからこそ、当然麻酔を施します。麻酔が効かなければ激痛を伴って当然なので、しっかりと効くように、歯科医師は入念かつ十分な麻酔を施します。よって、術中はまったく痛くありません。痛みが不安な方は安心してください。
ただし、抜糸や虫歯の治療を行なったことがある方ならお分かりの通り、麻酔を施す瞬間だけ、注射針のチクッとした痛みを伴います。チクッとした直後に早くも麻酔が効いてくるため、あとは痛みを伴いません。
なお、インプラント治療にかかる時間はトータルで20~30分程度。歯科医師は、この20~30分に対応する量の麻酔を患者に施すことになります。
術中に麻酔の効き目が弱ってきた時は
歯科医師は、予想される治療時間に合わせ、適切な量の麻酔を患者に施します。しかしながら治療中の小さなイレギュラーが邪魔をし、予想よりも治療時間が長くなってしまうことがあります。 当然、麻酔は永遠に効き続けるものではありません。時間とともに、徐々に効果が弱くなっていきます。そのため、予想よりも治療時間が長引いてしまうと、麻酔切れによって徐々に痛みを感じてくるかも知れません。 しかし、この麻酔切れの痛みについても、患者は心配する必要はないでしょう。なぜなら、歯科医師自身、治療が長引いていることを自覚しているため、それに合わせて麻酔を追加するからです。
なお、麻酔切れは、治療中のある瞬間に突然襲ってくるものではありません。麻酔は、時間をかけて、少しずつ少しずつ抜けていくものです。そのため、たとえ麻酔切れになったとしても、歯に突然激痛が走るわけではないので安心してください。「最初よりも少し違和感があるなあ…」と感じてきたら麻酔切れが始まった可能性もあるので、その際には遠慮なく歯科医師に伝えましょう。 また、一般に前歯よりも奥歯のほうが麻酔が効きにくいと言われていますが、当然ながら歯科医師は治療部位によっても麻酔を調整します。よって、たとえ奥歯のインプラントであったとしても痛みはほとんどないので、安心してください。
痛みに弱い方は事前に歯科医師に相談を
たとえ麻酔をするとは言え、日頃から痛みに弱い人にとってみれば、やはり治療前の不安は大きいもの。実際、痛みの感じ方や麻酔の効き方には個人差があるため、「どんな人でも100%まったく痛くない」と断言はできません。 他人よりも痛みを感じやすいタイプと自覚している人は、治療前に歯科医師と十分な話し合いをしましょう。一般的な歯科医師であれ、麻酔の量や種類・方法を検討してくれたり、細い注射針を使ってくれたり、麻酔液を温めておいてくれたりなどして、少しでも痛みを感じないよう対処してくれるはずです。「自分だけ個別で痛み対策をしてもらっている」と考えるだけでも治療中の気持ちはだいぶ楽になるので、事前にしっかりと歯科医師に相談してください。
以上のように、インプラントの治療中の痛みについてはあまり心配する必要はありません。実際にインプラントを受けたほぼすべての患者が「痛みはなかった」と応えているので、あなただけ例外的に痛いということはないでしょう。もし痛みを感じても医師に伝えれば適切な処置をしてもらえるはずです。
安心して治療の臨んでください。
それでも痛みが怖い方に ~静脈鎮静法~
理屈では説明できない痛みへの恐怖
歯の治療とは不思議なもので、どんなに「痛くない」と説明されても痛みが不安だという人は沢山います。
この恐怖心の原因は、おそらく幼い頃のトラウマのようなものが残っているからでしょう。
幼い頃に歯科治療で痛い思いをした人などは、理屈ではなく、生理的に歯科医院に対して恐怖心を抱くものなのです。
このタイプの患者は、治療前の恐怖心のあまり、動悸が激しくなったり血圧が上がったりなど、治療の痛みとは異なるタイプの心身の負担を強いられることになります。安心して治療に臨むためには、なんらかの対策が必要な場合もあるでしょう。
静脈鎮静法とは
インプラント治療の痛みなどに対する不安、恐怖心を和らげる方法として、歯科医院の中には静脈鎮静法という処置を行なってくれるクリニックがあります。
静脈鎮静法とは、腕の静脈から点滴で鎮静剤を注入する処置のことを言います。
点滴を始めて数分ほどで眠くなり、治療中、終始意識が薄っすらとした状態になります。
この静脈鎮静法の効果で、ほとんどの患者は治療への不安・恐怖心を感じなくなると言われています。それでもなお治療に恐怖を感じる人は、鎮静剤の量を調整してもらい完全に眠ってしまうことも可能です。
インプラントへの恐怖心が強い人は、歯科医院選びの基準の一つに、静脈鎮静法への対応の有無も確認することをお勧めします。
静脈鎮静法の効果まとめ
インプラント治療における静脈鎮静法では、主に次のような効果が期待できます。
- 治療前や治療中の不安・恐怖心が薄れ、リラックスした気分になることができる。
- 不安や恐怖心から来る血圧の上昇や動機などを抑え、身体的にも楽な状態で治療を受けることができる。
- 治療時間が実際よりも短く感じられる。
- 治療器具が口の中に入った際の嘔吐反射(喉がオエッとなる反射運動)を抑えることができる。
静脈鎮静法を採用する場合は、呼吸や血圧を監視しつつインプラント治療を行ないます。したがって、持病を持っている方も含め、どんな方でも安全に受けることができます。
静脈鎮静法は、具体的に次の4つのステップを踏んで行われます。
静脈鎮静法のステップ
- ステップ1:準備
鎮静剤とあわせ、血圧計や心電図などを用意します。 - ステップ2:鎮静剤注入
患者の状態を見つつ、点滴を通じてゆっくりと鎮静剤を注入していきます。 - ステップ3:治療
患者がリラックスしてきたことを確認したうえで、通常のインプラント治療を開始します。安全に治療を進めるため、治療中、脈拍や血圧等のバイタルチェックを並行します。 - ステップ4:帰宅指示
治療終了後、鎮静剤の影響が抜けたことを歯科医師が確認したうえで、帰宅の指示が出ます。
静脈鎮静法を伴うインプラント治療を受けた場合、治療後しばらくの間は鎮静剤が体から抜けません。そのため、状態が十分に回復するまでは、クリニック内で安静にしている必要があります。安全に歩行できる状態まで回復したうえで歯科医師より帰宅の指示が出ますが、可能であるならば、治療当日はご家族に付き添ってもらうことをお勧めします。
なお、静脈鎮静法を希望する場合、インプラント治療の費用とは別に約2万円の処置費がかかります。
術後には少し痛むことも
インプラント治療そのものの痛みについては、心配しなくても大丈夫であることが理解いただけたでしょう。ただし、抜歯した際と同様に、治療後は多少痛むことがあるので承知しておきましょう。
術後1週間ほどは痛み・違和感がある
治療中に痛みがないのは、麻酔が効いているからです。麻酔はいつまでも体内に残っているわけではないので、いずれ麻酔が抜ければ痛みが生じてくることになります。 ただし、突如として患部が痛くなるわけではなく、麻酔が抜けていくペースに伴って、少しずつ徐々に痛みを感じていくことになります。
インプラント治療とは、単なる虫歯の治療とは違って、切開や縫合を伴う本格的な外科手術です。麻酔が抜ければ患部が痛んでくることは、容易に想像がつくでしょう。特に、一度に複数の本数のインプラント治療を受けた場合、または、抜歯した直後にインプラント治療を受けた場合は、通常のインプラント治療よりも痛みが強くなる傾向があります。
なお、術後の痛みについては、治療した患者が安定するまでの期間、ずっと続くことになります。日を追って徐々に痛みは弱くなっていきますが、痛みや違和感が完全になるには、手術から1週間ないし10日ほどの期間を要するでしょう。 また、どんな治療においても同じですが、痛みの感じ方には個人差があります。インプラント治療を受けても、術後にほとんど痛みを感じない羨ましい方もいるようです。
抜糸の際に痛みを感じることもある
インプラント治療では、切開した部分を医療用の糸によって縫合します。そのため切開部分の癒着が完了すると、今度は抜糸が必要となってきます。
抜糸の際、まったく痛みを感じない方もいれば、中には一瞬だけチクッとした痛みを感じる方もいるようです。歯科医院では、抜糸の際の痛みを少しでも軽減するため表面麻酔を用意しています。痛みに弱い方や痛みに不安な方は、抜糸前に歯科医師に表面麻酔の使用をお願いすると良いでしょう。
骨移植を伴うと複数個所が痛むことがある
インプラント治療を確実に行なうためには、挿入する歯をしっかり支えるアゴの骨が必要です。ところが患者の中には、このアゴの骨が十分ではない例も見られます。その場合、歯茎の別の部位から骨を採取し、インプラントを行なう部分に採取した骨を移植することがあります。この処置のことを骨移植と言います。
骨移植を受けた場合には、骨の採取部分とインプラント部分との2ヶ所に手術を行なうことになるため、術後は2ヶ所に痛みを伴うことになります。なお、移植をする骨に人工骨を使用する場合には骨の採取の必要がないため、術後の痛みはインプラント部分の1ヶ所のみとなります。
インプラント治療後に痛みは、ほぼすべての患者が経験します。したがって、どの歯科医院でも治療後には鎮痛剤を処方しています。鎮痛剤の種類は内服薬であったり座薬であったり様々ですが、各患者にもっとも適した種類の薬を歯科医師が選んで処方してくれるため、治療後の痛みについて過剰に不安になる必要はありません。
ただし鎮痛剤は、麻酔とは異なり、完全に痛みを取り除くものではありません。また、市販の鎮痛剤に「合う薬、合わない薬」があることと同様、体質によっては、歯科医師から処方された鎮痛剤が効かない可能性もあります。
術後、鎮痛剤を服用したにもかかわらず眠れないほどの痛みを感じた場合には、治療してもらった歯科医院に遠慮なく申し出てください。どんな歯科医院でも、薬の種類を変えたり傷口を消毒してくれたりなど、少しでも痛みを軽減させるための対応をしてくれることでしょう。
自分でできる術後の痛み軽減の方法
処方される鎮痛剤の効果もあり、耐えがたいような術後の痛みを経験する方はほとんどいないでしょう。ただ、すでに説明した通り、鎮痛剤は痛みを完全に取り去ってくれる薬ではありません。そのため、多少の痛みが続くことは避けられません。
以下では、少しでも術後の痛みを和らげるために、自分でできる痛み軽減のポイントをご紹介します。
痛み軽減のポイント
- 手術直後の1日は患部を冷やす
手術後の1日は強い痛みを感じる場合が多いです。
この1日は、処方された鎮痛剤をしっかりと服用したうえで、あわせて患部を冷やすと痛みが和らげることができます。 方法としては、水道水で濡らしたタオルで患部側の頬を押さえるだけ。
可能な限り長時間、濡れタオルで頬を押さえておきましょう。
注意点ですが、くれぐれも氷を使って冷やさないようにしてください。
冷えすぎによって患部周辺の血行が悪くなり、インプラントを行なった部分の治りが遅くなる恐れがあるからです。 また手術から1日過ぎたら、今度は冷やすのではなく温めたほうが痛みの軽減につながります。 - 禁酒・禁煙する
お酒と煙草は、患部を刺激して痛みを増幅させる要因となります。
特にお酒は血液循環を良くすることから激しい痛みの原因となるので、十分な注意が必要です。
また、煙草は患部を刺激するだけでなく、全身の血液循環を悪くしてしまいます。
その結果、幹部の治りが遅くなることがあるので、歯の状態が安定するまでの期間は禁煙した方が良いでしょう。
禁煙が難しい方は本数を減らすなど可能な限り努力してみましょう。 - 熱い湯船に入らない
熱い湯船に入ると血圧が上がって血液循環が良くなり、血液が神経を刺激して患部の痛みが増します。
患部の痛みが落ち着くまでの間は、お風呂をぬるめに設定するか、またはシャワーだけで済ますようにしたほうが良いでしょう。 - 激しい運動をしない
激しい運動は、熱い湯船に入ったときと同様に、血圧が上昇して血流が良くなり、患部が激しく痛みます。
治療部分が安定するまでの間は、激しい運動を控えることをお勧めします。自宅周りを散歩程度なら問題はありません。 - 柔らかいものを食べる
強い力による咀嚼もまた患部への刺激となり、痛みを増幅させる要因となります。
患部の状態が落ち着くまでの間は、おかゆ、豆腐、うどん、ヨーグルト、プリンなど、なるべく柔らかいものを選ぶと◎です。 - やさしく鼻をかむ
鼻と口は隣接しているため、激しく鼻をかむと振動が歯へと伝わり、一時的に激しい痛みを伴うことがあります。
鼻をかむときは、歯に刺激のないようやさしくかみましょう。>
歯科医院から処方される鎮痛剤の効果で、ある程度痛みを緩和することができます。
加えて上記の自分でできる痛み対策を実施すれば、少しでも快適にダウンタイムを過ごすことができるでしょう。
治療からしばらくの間は、ぜひこれらのポイントを意識してみてください。
歯科医院から処方される鎮痛剤の効果で、ある程度痛みを緩和することができます。加えて上記の自分でできる痛み対策を実施すれば、少しでも快適にダウンタイムを過ごすことができるでしょう。治療からしばらくの間は、ぜひこれらのポイントを意識してみてください。
インプラントの痛みは心配する必要なし!
インプラントの治療方法を具体的に知ってみると、誰しも、治療に伴う痛みに不安を感じてしまいます。しかしながら、クリニックでは万全の痛み対策を用意しているので、患者側としてはさほどナイーブになる必要はありません。
- 治療中には痛みがほとんどないこと。
- 治療中の痛みが不安な場合は静脈鎮静法という方法があること。
- 術後には痛みを伴う場合もあること。
- 術後の痛み対策としての鎮痛剤が処方されること。
- 鎮痛剤と併せて自分でも痛み対策を行なえば、より快適にダウンタイムを過ごせること。
以上、インプラント治療における痛みについて、このページで十分に理解できたと思います。 実際にインプラント治療を受けた人たちの中に「治療が痛かった」と話す人はほとんどいないことも安心材料です。
事前に歯科医師としっかり話し、少しでも痛みの不安を解消した状態でインプラント治療に臨んでください。